ライアーライフスタイル

しばらく歩くと分かれ道になる。

私と山村は違う地域に住んでいたから、あの日はここで別れた。

笑顔で手を振った彼の笑顔。

髭が生えるようになったくらいで、今もそんなに変わっていない気がする。

分かれ道のガードレールに腰掛ける。

小学生の頃は、ここにこうして腰を掛けるのは禁止事項だったっけ。

手を振った後、あっちの道を進み始めた彼のランドセルが夕焼けを反射して綺麗だった。

ここで別れるまでの夢の時間。

恋が叶ったような気分になれたのは、これまでの人生でこの時だけだ。

風が吹いて木々がざわざわ騒ぐ。

小さく足音が聞こえてきた。

街灯が少ないから姿は見えない。

この辺りは人通りこそ少ないが、近くに民家のある公道だ。

こんなところに一人でぼんやりしていると怪しまれるかもしれない。

そろそろ車に戻ろう。

立ち上がってお尻をはたき、歩き出した時。

後ろから信じられない言葉が聞こえた。



「つる子?」


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