ライアーライフスタイル
振り向くのが怖かった。
今の私の姿を見て「つる子」と呼べる人物は、どう考えても世界中に一人しかいないからだ。
「つる子」
確信したように、もう一度。
「つる子だろ?」
ここで見つかってしまっては、もう振り向かないわけにはいかなかった。
そこには心底驚いた表情の山村が立っている。
「まさか本当に会えるなんて、思ってもみなかった」
言ってこちらに駆け寄る。
ここまできたら、もう私がつる子であることを否定する意味はどこにもない。
「やまむー」
私がつる子であると認める代わりに、そう呼ぶ。
山村は今にも泣きそうな顔をしていた。
「どうしてこんなとこにいるの? 夏休みの旅行にしても、センスなさすぎ」
他に言葉は見つからず、つい憎まれ口を叩いてしまう。
だって、もう二度と山村のことで期待したくないのに、理由なんて一つしか浮かばないのだ。
「わかってんだろ。あんたを探しに来たんだよ」