ライアーライフスタイル

山村がもっと小汚くて無能で卑しい男ならよかった。

そしたら泣いたりせず、気持ちよく罵倒できたのだ。

思いつく全ての罵詈雑言を浴びせ、気が済むまで胸につっかえたものを吐き出して、スッキリして清々しい毎日を過ごせたはずなのだ。

なのに実際の彼は、カッコよくて働き者で、たまにムカつくけどとても優しい。

どんなに跳ね返そうとしたって、私の心を何度も奪うのだ。

ぎゅっと彼の腕に包まれる。

新田主任や舟木に抱き締められたときとは比べ物にならない幸福感に満たされる。

会えて嬉しい。

探し出してくれて嬉しい。

私を2度もドン底に突き落とした男なのに、私はやはり見る目がないようだ。

「あんたなんて、大っ嫌い」

あんたのこと、すごく好き。

「うん」

「この世から消えちゃえばいいのに」

私を探し出してくれて嬉しかった。

「うん」

「いなくなっちゃえばいいのに」

もう少しそばにいて。

「うん」

「嘘。今の、全部嘘」

「わかってるよ」

山村は私が泣き止むまでずっと抱き締めていてくれた。

初恋の傷が少しずつ癒えていく。

風が吹いて、校庭に植えられた木々から清々しいにおいがした。


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