ライアーライフスタイル
私が泣き止んだ頃、山村は校舎を見上げて呟いた。
「懐かしいなーここ」
私は鼻声で情けなく軽口を叩く。
「ここを卒業してないくせに、自分の学校みたいに言わないで」
それをおかしそうに笑った彼は、当時を思い出してしみじみと言う。
「楽しかったなぁ」
そりゃあ、あんたは楽しかったでしょうよ。
たくさんの友達に囲まれて、女子にもモテまくって。
「私はあんまり楽しくなかった」
「そうなの? 色々思い出があるでしょ。初恋とか」
「初恋ねぇ……」
私が呟くと、山村がちょっとそわそわしだす。
「誰?」
「どうしてあんたに教えなきゃいけないの」
「そりゃあ期待してるからだよ」
「何を?」
「俺だって言ってくれるのを」
誰がそうだなんて言うもんか。
「……違うし」
確かに否定したはずなのだが、山村は満足げに笑う。