ライアーライフスタイル



私が泣き止んだ頃、山村は校舎を見上げて呟いた。

「懐かしいなーここ」

私は鼻声で情けなく軽口を叩く。

「ここを卒業してないくせに、自分の学校みたいに言わないで」

それをおかしそうに笑った彼は、当時を思い出してしみじみと言う。

「楽しかったなぁ」

そりゃあ、あんたは楽しかったでしょうよ。

たくさんの友達に囲まれて、女子にもモテまくって。

「私はあんまり楽しくなかった」

「そうなの? 色々思い出があるでしょ。初恋とか」

「初恋ねぇ……」

私が呟くと、山村がちょっとそわそわしだす。

「誰?」

「どうしてあんたに教えなきゃいけないの」

「そりゃあ期待してるからだよ」

「何を?」

「俺だって言ってくれるのを」

誰がそうだなんて言うもんか。

「……違うし」

確かに否定したはずなのだが、山村は満足げに笑う。
< 376 / 380 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop