ライアーライフスタイル

「あのさぁ、つる子」

「つる子はやめて」

「弦川さん」

「何?」

「殴られるの覚悟で思ったこと言っていい?」

「その覚悟があるなら、どうぞ」

山村はライトな感じでその“思ったこと”を口に出した。

私はそれを聞いても不思議と驚かなかったし、殴ろうとも思わなかった。

「偶然ね。私も同じこと考えてたの」

「本当に?」

「嘘だと思うなら、やめとく?」

「無理」

あの日笑顔で別れたこの道で、私たちは初めてのキスをした。

それが嬉しくて、私はまた少し泣いてしまった。

そしてしっかり手を繋いで歩き出す。

一秒でも早く二人きりになりたかった。

「今だから言えるけど、俺、リコーダー教えてもらってる時からつる子のこと好きだったんだよね」

「嘘ばっかり」

「嘘じゃないって。俺は正直な男なの」

15年以上の歳月をかけて叶った初恋は、胸焼けするほど甘く、なのにスパイシーで、眠るのも忘れてしまうくらい熱く、もう人生に悔いはないと思えるほど幸せだった。

こんな幸せをくれるのなら、もっと早く彼を許してあげればよかったのかもしれない。


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