ライアーライフスタイル



東京に戻ったのは8月の下旬。

ゆっくり時間をかけて荷ほどきをしていたら、いつの間にか9月になっていた。

暇であればあるほど、時間が経つのは早い。

「それで? 山村くんとは?」

あかりの質問に、私はこう答えた。

「別に何も」

あかりは満足そうに薄笑いを浮かべ、「ふーん」と言って私のベッドに寝転んだ。

別に隠したくてそう言ったわけではない。

嘘は時として関係を育むコミュニケーションツールなのだ。

婚約者の拓馬くんと些細なことで喧嘩して家出中のあかりは、片手にスマートフォンをギュッと握り締めて彼からの連絡を待っている。

きっといつものように、電話で必死に謝ってきた彼を許してあげるのだろう。

「私、出掛けるから留守番よろしくね」

「はいはい、ごゆっくりー」
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