ライアーライフスタイル

私は原口に見せる用に「気まずい」という顔を作り、山村に向かって言った。

「お兄ちゃん!」

山村と原口は同時に目を見開く。

原口が後ろを振り返った隙に、私は山村のもとへ走った。

「お兄ちゃん、おかえり。今日も遅かったんだね」

そう口に出しながら、表情だけでSOSをアピールする。

私たちは似ていないけれど、目力強めの美形という点は共通している。

原口はきっと信じる。

「ああ……ただいま」

助かった。

山村は察してくれたようだ。

「そちらは?」

山村は困惑しながら原口に目を向けた。

原口が口を開く前に私が答える。

「お友達の原口さん。金曜日に誕生日をお祝いしてくれた人なの」

二人はよそよそしく頭を下げ合う。

「ああ。妹がお世話になったようで……」

「いえ……」

山村の演技は下手だが、この場面では協力してくれているだけありがたい。

私は山村に隠れるようにして、次のセリフを繰り出す。

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