ライアーライフスタイル

私は深くため息をついた。

「もうやめましょう。私たちが言い合っても意味がない」

山村も私と同じように息をつく。

「そうですね」

山村に助けを求めたのは間違いだった。

原口とのことは、自分だけで解決するべきだった。

これから彼とは、正体がバレることを恐れつつ、今日のことを気まずく思って仕事をしなければならない。

そう思うだけで、気が重い。

「今日は失礼します。助けてくれてありがとうございました」

これ以上こいつと一緒にいたくない。

私は頭を下げ、彼に背を向け足を踏み出す。

しかしすぐに腕を掴まれ止められた。

「あんなことがあったあとです。送ります」

冗談じゃない。

「結構です。すぐそこですから」

私は乱暴に山村の手を振り払って駆け出した。

「弦川さん!」



私の8割は嘘でできている。

真実の方がよっぽど人を傷つけるから、私は嘘に包まれて生きていきたい。

仕事があるから無理だとわかってはいるけれど、もうこの男には二度と会いたくない。



< 70 / 380 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop