ライアーライフスタイル
「ダメだ帰れ」と言ってやりたい。
でもそれはできないのが歯がゆい。
「どうぞ」
私が渋々道を開けると、山村はしっかりとお辞儀をして入ってきた。
同じ空間にいるのに耐えられない。
郵便局や銀行など、要外出の用事でも済ませてこよう。
「ねぇねぇ、真咲ちゃん」
速達や書留の郵便物をまとめていると、怪しい笑みを浮かべた堀口さんが私を呼び止めた。
「はい」
私が応えると、堀口さんは口元に手を当て、私に耳を近づけるよう促され、従う。
「山村くんと何かあったの?」
そう尋ねた彼女の声は、小さいながらも弾んでいた。
私たちの短い挨拶から何を感じ取ったのだろう。
「え? 何かって、どういう意味です?」
そんな質問をされる意味がわからない程度には心当たりがない、という風を装ってそう返す。
「なんだか不自然によそよそしかったから」
不自然……か。
山村への敵意を隠しきれなかったのは私の落ち度だ。
私はにっこりと笑顔を作り、彼女が喜びそうな答えを口にした。
「素敵な方ですから、ちょっと緊張してしまったのかもしれません」
そんな風には微塵も思っていないのに、我ながらよく言えたなと思う。