ライアーライフスタイル

ただの同僚を送るだなんて、下心が見え見えだ。

よからぬことを期待しているのが、自意識過剰でなくともわかる。

彼女持ちのくせにエリート主任の愛人を口説こうだなんて、生意気な後輩だ。

「私は大丈夫。酔っ払った後輩に送ってもらわなきゃいけないほどじゃないよ」

「酔っ払ってなんかないですよ」

「酔ってる人ほどそう言うの。顔だって真っ赤だし」

「俺、すぐに顔が赤くなるだけで、意外と強いんすよ」

小柳をいなしながら、新田主任の様子をうかがう。

彼も私を気にしていたようで、目が合った。

『大丈夫か?』

『これくらい何ともない』

視線だけで会話をする。

一秒にも満たない秘密のアイコンタクト。

これくらいゾクゾクさせてくれる人でないと、服を脱ぐ気にはなれない。

新田主任と初めて寝た時だって、こうして目と目で駆け引きをして、口なんかほとんど開かずに肌を重ねたのだ。

女に脚を開かせるのは言葉から察知できる下心ではなくそれを凌駕する大人の色気であり、言葉をあまり交わさないことこそ、秘密の関係を保つ秘訣である。

< 96 / 380 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop