ライアーライフスタイル
数十分後。
小柳がトイレから戻ってこなくなったのを確認して、私は立ち上がった。
「みなさん、ごめんなさい。私、今日はこの辺でお暇しますね」
申し訳なさそうに眉を寄せると、周囲の面々が惜しむ声をかけてくれる。
「あら真咲ちゃん。今日はずいぶん早いのね」
「今日は二次会行かないの?」
今日は山村もいるのだから、二次会なんか参加したくない。
トイレから戻って来た小柳の面倒を押し付けられるのも面倒だ。
もちろんそうとは言えないので、それらしい理由を添えておく。
「明日、早朝から予定が入ってて。寝坊できないんです」
「あらあら、デートかしら?」
堀口さんの言葉には、笑ってごまかしておく。
今日はメーカーのおじさんたちのチヤホヤが堪能できなかった。
タダ飯とタダ酒は十分に頂いた。
帰ってメイクを落として、ゆっくりしたい。
ちょうど山村もいないし、この隙に帰ってしまおう。
「それじゃあ、また来週。お疲れ様でした」