ライアーライフスタイル
脱出成功。
店を出てすぐ、私は伸びをして深呼吸した。
嘘で固めていた体に血が巡り、心と体がほぐれていくのを感じる。
今日は朝から本当に嫌な一日だった。
駅に向かおうとした時、ヌッと人影が現れた。
見覚えのある白シャツとバーガンディーのネクタイ。
顔を上げると、シャツの上には今一番会いたくない男の顔が見えた。
「……山村さん」
個室内にいないと思ったら、こんなところにいたのか。
酔った様子はない。
どうやら酒には強いらしい。
「弦川さん。あなたに言っておきたいことがあります」
「何ですか?」
もうこの男に愛想を振り撒いても意味がない。
私は露骨に不機嫌な顔を見せた。
しかし山村は凛とした表情のまま、私をまっすぐに見据えて告げた。
「弦川真咲さん。やっぱり俺たち、過去に会ったことがあると思うんです」