約束の恋
もちろん、その時も返事は断った。
それからだ、癒亜が俺に付きまとうようになったのは。
「しかし、本当なんで慧なんかを……」
うっせぇ、しつこい。
「純の言うとおり、あんな天使みたいな子を毎回、鬼ごとくこっぴどく振るなんて……不思議で堪らないよ」
鬼のごとくはねぇよ。
「俺だったら、即OKするのによぉ。断る慧の思考回路が分からんわぁ。なあ、なんで断わんだよ?」
「あいつが儚すぎるから……」
俺にもよくわかんねぇけど、と付け足した。
俺の回答に純と真臣は、はぁ? と訳が分からんというような顔をする。
正直、俺もよくは分かんない。
だけど、ひとつだけ言えるなら、癒亜は前にもまして儚げだと、いうことだ。
前から儚さはあった。
だが、それも年々増すごとに儚さは増していく。
――いつかきっと、癒亜は俺から離れていく。
そう幼い俺は感じさせずにはいられなかった。
だからだろう、癒亜の告白――想いを断るのは。