約束の恋
そんなある夏の暑さがまだ残っている季節の中、癒亜が言い出したのは、
「ねえ、慧君。勝負しよ? 三ヶ月。――三ヶ月、私にちょうだい」
――賭け事だった。
やや切迫した感じだったが、声は非常に、不思議にも穏やかだった。
嫌な予感――いや、予兆がする。
理由のない不安のようなものが、ぞくっと背中に這ってきたからだ。
「勝負?」
「うん、勝負……っていうか賭けかな」
人差し指を頬に当てて首を傾げる癒亜に、俺は少し黙り込んだまま思考を巡らせた。
癒亜に儚いところがあるのはもとからだが、
それ以前にもまして、いまは日に日に儚さが増している気がする。
このまま、こいつが花のように散ってしまうのか。
んなわけ、ないか。
そんなことを思っても、胸の奥には、不安の蟠りは残ってる。