私の片想い事情 【完】

「ちょっと……こんなところでやめてよ」

「何で?」

「何でって、人が来たら……」

「クス、西崎さんに見られたくない?」

「なっ----」

「西崎さんが好きなんでしょ?みなみさん見てればわかるよ。単純だもん」


瀧川君は涼しい顔してシレっとそんなこと言う。


もう頭がパニック状態。


た、単純って……そん、なにバレバレなの、私の気持ちって?


壁の隅に追いやられ、捕食寸前のこの状況よりも、瀧川君の言ったことの方が私には衝撃で、呆然としてしまう。


ハンターの瀧川君はというと、「でもいいよ?俺あんまりそういうこと気にしないし」と訳の分からないことを呟きながら、私のおでこにちゅっとキスを落としてきた。


「デコちゅうヤメローーーーっ」そう心の中で叫ぶも、もう、言葉も出てこない。


ゆでタコのように真っ赤になった顔で瀧川君を睨む、私にはそれだけで精いっぱいだった。


だから-----


開かれたドアの音にも、近づく足音にも私は気づかなかった。



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