私の片想い事情 【完】
「お前、そんな真面目なヤツだったか?」
隼人の低く響く声にハッと視線を戻せば、どこか腑に落ちないといった面持ちで瀧川君を睨んでいる。
どうしてこんなにムキになるんだろう。
瀧川君は私と隼人両方の反応を楽しんでいるのは間違いなく、ホント不届き者!
いつもの隼人ならこんなことサラっと流すのに……
もしかして、もしかしなくても、ヤキモチ!?
なんておバカな考えが過る。
「みなみさんのおかげです」
え----?急に名前を呼ばれ、妄想世界から引き戻される。
「だってみなみさん、すごく真っ直ぐで全力投球じゃないですか。俺も頑張ろうと思って」
そう言った瀧川君の横顔はからかった笑みもなく、真面目だった。
そんなことを言われたら、また頭を小突いてやろうと思った拳をひっこめざる得ない。
自信満々の美少年は、そんなところもズルく、憎めない。
そして、隼人はというと、何を納得したのか分からないけど、「そうだな」とボソっと呟きスタスタと歩いていった。