私の片想い事情 【完】
受付デスクの戸締りをしていると、瀧川君がノックをして入ってきた。
「あれ、菅波君と帰ったんじゃなかったの?」
「何でわざわざヤローと帰らなきゃいけないわけ?明日も大学で顔合わせるのに」
いや、友達だろ?と突っ込みそうになり、そう言えば、休みなのにどうしてここに来たんだろうと彼を見れば、何だかよく分からない表情をしていた。
「ねぇ、本当にそれ天然?」
「はぁ?」
瀧川君の言っている意味がわからず私は首をかしげる。
「俺、さっき言ったよね?みなみさんに会いに来たって。何でいるんだろう、みたいな顔しないでよ。鈍感も通り越して、失礼だよ」
まるで心の中を一字一句読まれたようで、私は口をパクパクさせて何も言うことができない。
「昨日の続き、するって言ったよね?」
昨日のって……と昨夜のキスを思い出し、顔が急に赤くなる。
「な、な、何勝手なこと言ってるのよ。誰がそんなこと……」
私は逃げるように、自分のデスクに座り、帰る準備をした。
あぁ、こんな時にかぎって、家に持ち帰ろうと思っていた資料やファイルが見つからない。
神様――――!こんなときどんな態度を取ればいいですかぁぁぁ?