私の片想い事情 【完】
焦りながらも挙動不審に帰る準備をする私に、瀧川君はニコニコ笑いながら近づいてくる。
ど、ど、どうしよう?
「本当に楽しいね、みなみさんって。見てて飽きない」
「あ、飽きないって……」
「何もしないからそんなに構えないでください」
本当に?とチラッと瀧川君に視線を向けると、ほら、と両手を上げてみせた。
「からかわないでって言ったよね?私、こういうことに慣れてないんだから」
「俺も大真面目だって言ったよね?」
何が?と聞きそうになり、その答えを聞いて困るのは自分のような気がして私は口を噤んだ。
手をぎゅっと握り何も言わない私に諦めたのか、瀧川君はちょっと距離を取って隣の席に座った。
「みなみさん、まだ仕事あるの?」
「う、ううん。もう帰る」
「そっ……」
普通に戻った瀧川君にホッとしながらも、何だか年下のくせにこの大人な余裕が恨めしくて、そして羨ましいと思う。
私は、探していた書類をやっと見つけることができ、カバンに入れた。