私の片想い事情 【完】
朝シャワーを浴びたのに、職場に着く頃には、Tシャツが背中に張り付くくらい汗だくになった。
これも、このゴーグルのせいだ、とスポーツ用品店の袋をぎゅっと握りしめ、事務所の扉を開いた。
ああ、エアコンが効いた館内は素晴らしい。
「お疲れ様です」
ぺこり頭を下げた視線の先に、綺麗に組まれた二本のすらっとした脚が飛び込んできた。
顔を上げれば、お色気たっぷりのお姉さまが、濡れた髪を拭きながら化粧を直していた。
彼女はチラッと私を見て微笑む。
「お疲れ様、みなみ」
女性相手にときめくっていうのも変だけど、毎回彼女のこの流し目にドキドキさせられる。
多分私はキレイもの好きのミーハーなんだろうな、と思う。
頬がぽってり紅潮しているであろう私に、特上のスマイルを送るこのお姉さまは、宮本亜紀さん。
3年先輩の人気美人インストラクターで、私は全てのことにおいて、この方には頭が上がらない。
別に弱みを握られているわけでもないんだけど、この美貌と色気を前に何故か逆らえないのだ。