私の片想い事情 【完】
「パパさんも静香さんも彰人君もすごく心配している。隼人のことを必要としている人はいっぱいいるんだよ?お願いだから隼人戻って……」
「どこに戻るんだよ?ああ、あの他人が住む家か?」
「隼人っ!」
「事実だろ?勘違いするなよ。別に今更静香さんを恨んだりしてねぇよ。静香さんとのことがなかっても、あの女は俺を捨ててたさ。俺に対してこれっぽっちも愛情を持っていない。産んだことすら後悔している女だ」
隼人の自分を卑下した言い方に心が悲しくなる。
「隼人、そんな言い方やめて」
「みなみは大げさなんだよ。お前、一体俺の何なんだ?わざわざ女といるところまで来てじゃまして。嫉妬か?」
隼人は私にどう言えば、私が諦めるか、私を傷つけられるか知っている。
それでも、その時の私はひるまなかった。涙を散らしながら隼人を離さなかった。
「どうせセックスフレンドでしょう?毎晩違う女といたくせにっ!その誰にも心を許してないくせにっ!」
「うるさいっ。黙れよ、みなみ」
隼人のドスの効いた声に、一瞬ひるむも、私は続けた。
「隼人、心の無い関係を持っても虚しいだけだよ。お酒に逃げても惨めなだけだよ。隼人を必要としてくれている人たちのところに帰ろう?隼人だって頭では分かっているんでしょ?」
私の腕の中で隼人の身体はまだ力が入っている。
でも、何度も離せと言うくせに、全力で私を押しのけようとしない。
本当は必要とされたいくせに、それを口に出せない隼人。
求めて捨てられたときが怖いから―――
私は、隼人を抱きしめながら、小さな声でつぶやいた。