私の片想い事情 【完】
「そばにいろよ、みなみ。どこにも行くな」
思いもしない台詞が隼人の口からこぼれたかと思うと、縮められた距離がゼロになり、次の瞬間、私は隼人の腕の中にいた。
一体何が起こったのだろうか、と隼人の腕の中で硬直していると、隼人の絞りだすような声が鼓膜を振動させる。
「みなみだけは失いたくない。瀧川にも誰にも渡したくないんだ」
吐息と共に絞り出すように零された隼人の言葉は、私の心を震わす。
「隼人……」
私は、そっと隼人の背中に腕を回した。
広い背中。そして力強い腕。
温かい胸に心が切なくなる。
こんな風にずっと抱きしめてもらいたかった。
でも―――
これが隼人の答えなの?
私は、そう尋ねたいのに、その言葉を飲み込んだ。
隼人、今言ったこと、それはどういう意味なの?
友達として?それとも、女として?
そう問い正したいのに、聞けない。
だって、私を抱きしめる隼人の身体が震えていたから。