私の片想い事情 【完】
「い、いったーーーい!あ、亜紀さん、何するんですかぁ!?」
頭とおでこをさすりながら涙目で亜紀さんを睨めば、氷の微笑を称えた美しい顔で見下ろされた。
ひっ、メデューサ再び!
「あら、起きていたの?ありもしない天国へとトリップしているのかと思って現実に引き戻してあげたのよ?」
「ありもしない天国って……」
頭とおでこの痛み以上に、その言葉がぐさりと胸に突き刺さる。
「ちょっと甘い言葉をかけられ、抱きしめられただけで舞い上がって、バカじゃないの?隼人に真意も確かめないで」
「だ、だって、こんなこと今までなかったし……」
「隼人に好きだって言われたの?」
「……ぅ……イエ……」
「抱きしめられた後は?キスは?未遂に終わったセックスの続きはした?」
「なっ……亜紀さん、事務所で何てこと!す、するわけないじゃないですかぁ!?」
大きな声でセックスなんて言うもんだから、私は真っ赤になって慌てる。
そんな私に、ハァと溜息をつき、女王陛下の尋問が再開された。
「何で?何でしないの?」
「な、何でって……」
「本当に、そのままラーメン食べて、さよならしたの?」
ありえないと言わんばかりの亜紀さんの呆れ顔に、それのどこが悪いのか私にはさっぱりわからない。