私の片想い事情 【完】
バスに乗ってからが大変だった。
アパートの最寄りのバス停までは、15分もかからない。
だけど、今の私には1時間のように思え、バスの中で、足をジタバタさせ、何度も何度も時計を確認していた。
停留所についてからは、全速力でアパートへと走った。
今日一日の疲れなんてもう吹っ飛んでいた。
そして亜紀さんに言われたことも。
恋は盲目とはホントよく言ったもの。
傍から見た私は、滑稽だっただろう。
アパートについて、隼人が来るまでにまだ10分はあったのを確認すると、クーラーを入れ、すぐにバスルームへと向かった。
ただでさえ、バス停で汗だくになった上に、全速力で走ったせいで、身体中が汗をかいて気持ち悪い。
冷たいシャワーを全身にかぶった。
軽く、髪を洗おうとシャンプーを手に取ったとき、ふと隼人の言ったことを思い出した。
「隼人、前のシャンプーの方が良かったんだっけ?」
新しいサロン仕様のシャンプーを棚に戻し、前から使っていた、ドラッグストアで安売りの、詰め替え698円のシャンプーを手に取った。
マッハで全身を洗い、タオルを二枚使って身体を拭く。
とりあえず、髪は後で乾かすとして、急いでTシャツとショートパンツを身に着けた。
何とか間に合った、と安堵した瞬間、ガチャと玄関のドアが開く音と供に隼人の声が聞こえてきた。