私の片想い事情 【完】
「みーなーみー」
「隼人?」
隼人に会えることが嬉しくて慌ててバスルームから出て、玄関に向かう。
靴を脱いで、我知ったると言った様子で中に入ってくる隼人は、ちょっと機嫌が悪そうだった。
どうしたの?と問えば、ドアを指さし、呆れたような顔をされた。
「カギ!」
隼人に指摘され、私は、余りにも焦っていた為、ドアのカギをかけ忘れていたことに気付いた。
「あ、忘れてた。でも、隼人すぐに来たじゃない?」
「そういう問題じゃないだろ?」
隼人にぴしゃりと怒られ言葉に詰まる。
私は、よく鍵をかけ忘れることが多い。
実家にいたときは、大家族なせいか、夜以外は鍵をかけることがなかった為、アパートでもつい忘れてしまう。
隼人に度々注意されていたんだけど。
ごめんなさいと素直に謝ると、私を見下ろす隼人の顔が更に険しくなった。
えっ、次は何?と思えば、濡れたままの髪をつんと引っ張られた。