私の片想い事情 【完】
「今は本気ですよ」
「た、瀧川君、それは……」
断ったでしょう?と言いかけて私は言葉に詰まった。
好きという気持ちを否定しないで、と言った瀧川君。
その気持ちは今の私には痛いほど分かる。
だって、まさに私の隼人への気持ちがそうだから。
これは何かのパロディだろうか。
3人の恋の矢印が見事に一方通行。
交差することのない想い……
しんと事務所が静まりかえり、誰も口を開くことができない。
こんな時亜紀さんがいてくれたら、雰囲気をガラっと変えてくれるのに、といつもは、逃れたい女王様に助けを求めた。
「みなみは―――」
沈黙を破って隼人が瀧川君に何か言いかけたとき、バーンと事務所のドアが開かれ、空気を読まないマネージャーの声が響き渡った。