私の片想い事情 【完】

「今は本気ですよ」

「た、瀧川君、それは……」


断ったでしょう?と言いかけて私は言葉に詰まった。


好きという気持ちを否定しないで、と言った瀧川君。


その気持ちは今の私には痛いほど分かる。


だって、まさに私の隼人への気持ちがそうだから。


これは何かのパロディだろうか。


3人の恋の矢印が見事に一方通行。


交差することのない想い……


しんと事務所が静まりかえり、誰も口を開くことができない。


こんな時亜紀さんがいてくれたら、雰囲気をガラっと変えてくれるのに、といつもは、逃れたい女王様に助けを求めた。


「みなみは―――」


沈黙を破って隼人が瀧川君に何か言いかけたとき、バーンと事務所のドアが開かれ、空気を読まないマネージャーの声が響き渡った。




< 333 / 480 >

この作品をシェア

pagetop