私の片想い事情 【完】
「お父さん、もういいよ。僕、選手コースじゃなくて」
「陽介、何を言っているんだ?」
「僕、本当はしんどいんだ。これ以上はいいよ」
高橋君が寂しそうに笑う。
多分、彼の本心じゃないだろう。本当は、ギリギリまで頑張りたいはずだ。
でも、彼は、マネージャーの言わんとすることが、幼いながらにも理解しているんだ。
「陽介、お前は余計なことを言うなっ」
お父さんが高橋君の手を振り払い、マネージャーに向き合う。
「お父さん、やめてってばっ!」
高橋君は目に涙をためて、お父さんにすがった。
「陽介、離しなさい!」
パンと高橋君を再度振り払った瞬間、彼の小さな身体が勢い余って、グラっと倒れそうになる。
危ない、そう思った瞬間、咄嗟に身体が動いていた。