私の片想い事情 【完】
しばらくして、隼人がポツリポツリ呟く。
「みなみがいなくなるかと思った」
とか、
「プールにみなみの間抜けな身体がぷかぷか浮いていたの見たとき、心臓が止まりそうになった」
とか、
「もう目を開けないのかと思った」
とか―――
そう、まるで、子どもがお母さんを心配するように。
私は、ああ、と納得した。
よーするに、隼人は『甘い』んじゃなくて、『甘えていた』んだ、と。
こんな時まで『母親』でいなければいけない自分にもう、感嘆の溜息しか出ない。
もう、わかったよ。
降参だよ、隼人。
一生ずっと、隼人の一番の理解者で、家政婦で、母親でいてあげる。
だから、そんな泣きそうな顔しないで。
私はどこにも行かないから。
私は、そっと隼人の髪を撫でながら、心配かけてごめんね、と呟いた。