私の片想い事情 【完】

しばらくして、隼人がポツリポツリ呟く。


「みなみがいなくなるかと思った」


とか、


「プールにみなみの間抜けな身体がぷかぷか浮いていたの見たとき、心臓が止まりそうになった」


とか、


「もう目を開けないのかと思った」


とか―――


そう、まるで、子どもがお母さんを心配するように。


私は、ああ、と納得した。


よーするに、隼人は『甘い』んじゃなくて、『甘えていた』んだ、と。


こんな時まで『母親』でいなければいけない自分にもう、感嘆の溜息しか出ない。


もう、わかったよ。


降参だよ、隼人。


一生ずっと、隼人の一番の理解者で、家政婦で、母親でいてあげる。


だから、そんな泣きそうな顔しないで。


私はどこにも行かないから。


私は、そっと隼人の髪を撫でながら、心配かけてごめんね、と呟いた。




< 357 / 480 >

この作品をシェア

pagetop