私の片想い事情 【完】

顔を見合わせた状態でどれくらいいいのだろう。


急に、ガラガラとノックなしに開く扉に、私も隼人も驚いて顔を上げた。


「みなみさん、大丈夫?」


ドアの傍には、息を切らし、汗だくの美少年。


肩で呼吸を整えながら、その汗を肩で拭う。


汗をほとばしらせながらも、それがキレイな水にしか見えない、漫画の主人公のような瀧川君は、これまた漫画の中のようなセリフを爽やかに言う。


「西崎さんから目を覚ましたって連絡があって、遅いとは思いましたけど、会いたくて来てしまいました」


ベッドサイドまで駆け寄り、隼人の身体をどけさせ、私の手をぎゅっと握る。


「CTは異常ないそうですね。夏バテらしいのでしっかり休んでください」


彼の優しい言葉にうるうると感動していたら、それに浸る暇もなく、瀧川君の手が離れた。


ベリッと音がしそうな勢いで、瀧川君の身体はベッドサイドから引き離された。


「西崎さん、痛いです!」


隼人にTシャツの首を掴まれ、瀧川君はかなり苦しそうだ。


「は、隼人、手を離してあげて!」


隼人は、ジロっと私を見ると、瀧川君に向かって、勝手に触るな、と言い捨てた。





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