私の片想い事情 【完】
マネージャーの、お前らいつの間に、なんて声が聞こえたけど、隼人はマネージャーのことは全く無視して、私に触りまくる。
私は、まるで大きな人形になったように、ピキーンと動けない。
見るに見かねた瀧川君が、大きなため息と共にいきなり立ち上がった。
「真さん、俺たちは視界の端にも入っていないみたいだから、行きましょう」
「そうだな、目も当てられないな」
腕時計をチラっと確認し、もうこんな時間か、と言ってマネージャーも席を立った。
出がけに瀧川君が、こちらに視線を寄越し、我に返った私はやっとぽかーんと開けたまま口からやっと言葉を発することができた。
「あ、あの、わざわざ、ありがとう、ございました」
何て間抜け。何かもっと気の利いたことを言えないのか、とパニック状態の脳みそであれこれ考えるが、隼人に抱きすくめられたままの私は、オロオロするばかり。
「いーえ、ドウイタシマシテ!」
瀧川君の冷めた、そして呆れた声に、自分のこの状況がすごく恥ずかしくなって、隼人に小さな声で離して、と懇願したけれど、それは当然のごとく無視された。
再度大きなため息をついた瀧川君が隼人に視線を移動し、苦笑する。
「西崎さん、俺たちをけん制する前に、まず、みなみさんに説明した方がいいですよ。全く状況がわかっていないし、すごい誤解をしてると思います」
瀧川君の言葉に、隼人は私に視線を移し、目を見開いて驚いている。