私の片想い事情 【完】

「ごめん、みなみ。俺が悪かった。言葉が足りなかったよな、ごめん。だから泣きやめよ」


隼人は私の涙を掬いながらオロオロしている。


「知らない!だって、勝手に出てくるんだもん」

「頼むよ。俺、お前に泣かれるとどうしていいかわからなくなる」


隼人は、そっと私の背中に手を置き、子どもをあやすようにトントンとさする。


もう一つの手は、空中をふらふらしている。


うーとうねりながら、その手持ちぶたさにしている手をベッドサイドにつく。


何だか、その不恰好さにおかしくなって、今度は笑いがこみ上げてきた。


「おい、泣くか笑うかどっちかにしろよ」

「だって、隼人がトントンって……」


私は、隼人の腕の中で大笑いした。


「みーなーみー」


苛立った声音で名前を呼ばれ、ビクンと顔を上げれば、いきなり隼人の怒った顔が真ん前に。


その怒ったような焦れたような表情に、泣いていた心がトクンと小さく鳴る。


あっ、キスをされる、と思った瞬間、唇は塞がれていて、私は、どうしてなのか分からないけど、驚くことなくそれを受け入れた。




< 365 / 480 >

この作品をシェア

pagetop