私の片想い事情 【完】
静香さんとパパさんと三人の夕飯を済ませ、客間で休んでいると、コンコンとノックのする音がして、私の心臓が一気に跳ねた。
時計を見れば9時。
隼人―――?
隼人が帰ってきたのか、と期待に胸を膨らませ返事をすると、襖からひょこっと顔を出したのは、彰人君だった。
「なーんだ、彰人君かー」
つい伸ばしていた背筋の緊張がほぐれる。
「何だって、みなみちゃん失礼だよ」
「あっ、ごめん、ごめん」
「クス、兄貴かと思った?」
彰人君は、意地の悪い顔で覗き込んでくる。
「ち、違います!」
慌てて弁解しようとしたけど、彰人君は、冗談だよ、と笑いながら焦る私の頭を撫でてくる。
その笑顔、癒されるなー。
うー、いつの間にこんなに大人びたのかしら?私の方が年上なんですけど、と睨んでみるも、彰人君の笑顔に私は弱い。
「みなみちゃん、身体の方は本当に大丈夫なの?」
「うん、大丈夫。病院で点滴されたし、たっぷり寝たしね。ありがとう」
「兄貴があんなに焦ったところ見たことがなかったから、俺、すごく心配したんだよ。今日だって、すぐに帰ってきたかったけど、部活抜けれれないし」
そう言って頭をコツンと私の肩に乗せてくる彰人君は、やっぱり隼人とよく似ている。
髪質が少し硬いところも、後頭部も大きさも、そして甘え方も。