私の片想い事情 【完】
「心配かけてごめんね」
「うん。みなみちゃんに何かあったら、本当に西崎家は大変なことになるよ」
肩に頭を乗せたままボソっと呟く彰人君。
何だか、初めて会った小学生の時の彰人君に戻ったみたい。
「彰人君も静香さんも大げさだよ」
「みなみちゃんは分かってないなー。あの兄貴と母さんを転がせるの、みなみちゃんだけなんだから」
「はい?」
転がされて、振り回されているのは私の方なんだけど、と言うと、だから何も分かってないって言ってんの、とクスクス笑われた。
うーん、肩口がくすぐったいなー。
「彰人君、髪くすぐったいよ」
「もう少しこうさせてよ。兄貴が帰ってきたら、俺みなみちゃんに甘えられないんだから」
「何言ってんのー?彰人君は私の弟も同然なんだから、いつでも甘えていいよ」
「兄貴にボコられるよ……」
「隼人は彰人君が大好きだからそんなことしないよ。それにする意味はわからない」
「みなみちゃんってさー天然だね……」
肩に頭をのせたまま、彰人君はまたクスクス笑う。
「もう、くすぐったいってば!」
背中を丸めて甘える姿は、小学生の頃から変わらない。
背は隼人と変わらないくらいまで一気に伸びたけど、私には、まだまだかわいい弟の彰人君のままだ。
かわいいなぁと背中をぽんぽんと叩くと、子ども扱いしないでよ、と怒られた。