私の片想い事情 【完】

「心配かけてごめんね」

「うん。みなみちゃんに何かあったら、本当に西崎家は大変なことになるよ」


肩に頭を乗せたままボソっと呟く彰人君。


何だか、初めて会った小学生の時の彰人君に戻ったみたい。


「彰人君も静香さんも大げさだよ」

「みなみちゃんは分かってないなー。あの兄貴と母さんを転がせるの、みなみちゃんだけなんだから」

「はい?」


転がされて、振り回されているのは私の方なんだけど、と言うと、だから何も分かってないって言ってんの、とクスクス笑われた。


うーん、肩口がくすぐったいなー。


「彰人君、髪くすぐったいよ」

「もう少しこうさせてよ。兄貴が帰ってきたら、俺みなみちゃんに甘えられないんだから」

「何言ってんのー?彰人君は私の弟も同然なんだから、いつでも甘えていいよ」

「兄貴にボコられるよ……」

「隼人は彰人君が大好きだからそんなことしないよ。それにする意味はわからない」

「みなみちゃんってさー天然だね……」


肩に頭をのせたまま、彰人君はまたクスクス笑う。


「もう、くすぐったいってば!」

背中を丸めて甘える姿は、小学生の頃から変わらない。


背は隼人と変わらないくらいまで一気に伸びたけど、私には、まだまだかわいい弟の彰人君のままだ。


かわいいなぁと背中をぽんぽんと叩くと、子ども扱いしないでよ、と怒られた。




< 371 / 480 >

この作品をシェア

pagetop