私の片想い事情 【完】
ゆっくり瞼を開けた瞬間、現実が一気に飛び込んでくる。
そして、私はありえない夢を見ていたことに気付いた。
Welcome to the real world !
カーテンの隙間から零れる朝日は、消し忘れた蛍光灯に変わっていて、チュン、チュン、と泣く小鳥のさえずりは、耳を覆いたくなるほどうるさいセミの鳴き声に変換されている。
確かに感じる背中の温もり。
というか、暑い……
心地良いシーツの感触どころか、色んなところがベタベタして、さっさとシャワーを浴びたいくらい気持ち悪い。
そして、額にキスどころか、全く起きる気配のない男。
「はぁぁぁぁ……」
私は、重い溜息をつき、寝返りを打とうとしてある違和感に気付く。
「う、動けない……」
後ろから回された腕と絡められた足に、身体が固定されたように動かない。
そして、唯一夢と同じ下腹部の違和感。
身じろぎすると、その違和感の正体が何か瞬時に悟った。
ロマンス小説で、『まだ彼のモノが中に入っているみたい』とヒロインが赤面して言う台詞。
まさか、と思いたいけど、私の場合は、『入っているみたい』ではなく、まだ入ったままだ。
「う、うそ……」