私の片想い事情 【完】
「も、もう、何それ……。私、男の人に初めてウィンクされた……」
「ドキンとしたでしょ?」
「してないもん!」
私は涙をぬぐい、キッと瀧川君を睨む。
そんな私に、瀧川君は嬉しそうに笑い、ペットボトルを一本かばんから取り出すと、私に手渡してくれた。
「また夏バテにならないようにね」
そう言い残して颯爽と駆け足で去っていく彼は、とても素敵だった。
うん、正直ドキンとしたよ。
今までもいっぱいしてたんだよ。
結構心は揺れてたんだから……
そして、すごく救われた。
ベンチの背もたれに身体を預け、瀧川君の後ろ姿を見送る。
またこみ上げてきそうな涙を、ペットボトルを目に当てて押し返した。
「冷たくて気持ちいい……」
私は、そのまま目を閉じ、何度も心の中で彼にありがとう、と呟いた。