私の片想い事情 【完】
「私、浅井みなみ。平泳ぎが専門なの」
そのあどけない表情に、一瞬中学生かと思ったけど、同じ年だと聞いて驚いた。
みなみの第一印象は、よく笑うヤツ。
そして、まな板のような薄っぺらい胸に、細い腰。女としての色気は皆無。
恋愛対象としては、まずあり得ない、そう思っていた。
みなみが、俺のことを好きなのは、一目瞭然だった。
まるでアイドルに恋しているような、目をハートにした熱い視線を送られれば嫌でも気付く。
その視線に、ひどくイライラした。
あいつの真っ直ぐな瞳に見つめられるたびに言いようのない居心地の悪さを感じた。
どうせ、俺の顔が好きなだけだ。
中身なんて関係ない。
お前は、俺の何を知ってそんな熱に浮かされたような顔をしているんだ?
にっこり笑ってやれば、ただそれだけで、お前の中の俺は、完璧な王子様になる。
この一週間で違う女三人とヤッたって言ったら、お前はどんな顔をするんだろうか?
告白してきたら、セックスフレンドならいいぜ、と言ってやろうか?
その純粋無垢のような面を下げ、みなみはどう反応するんだろうか、ずっとそんなことを考えていた。