私の片想い事情 【完】
俺の母親は、俺が5歳の時に男を作って家を出て行った。
「じゃあね、隼人」
あの女は、綺麗に化粧した顔で、にっこり笑って俺を捨てたんだ。
母親の記憶なんて殆ど無いはずなのに、その時のあの女の顔と強い香水の香りだけが今でも脳裏にこびりついている。
最初は、慕情から忘れられなかったあの笑顔が、徐々に醜い女の象徴に変わった。
そして、俺はずっとあの忌々しい残像に縛りつけられている。
実の母親に捨てらた俺は、女を本気で愛することができなかった。
別に女を恨んでいるとか、そんな幼稚な感情からじゃない。
ただ、物理的に、女を愛せなかった。
化粧した女が俺に跨り腰を振るたびに、吐き気がするほど嫌悪感を抱いた。
キツイ香水をつけた女が擦り寄ると、あの女を思い出した。
それなのに、女を抱き続ける俺は、どこかおかしかったのかもしれない。
快楽だけを求める関係。
それは、ひどく心地よくて、そして孤独だった。
その心のバランスが崩れそうになるとき、俺は決まってみなみを利用した。