私の片想い事情 【完】
「隼人、大丈夫?」
さっきまで刹那に染まっていた瞳が、心配そうに俺を覗き込んできた。
俺は、ハッとして、伸ばしかけていた腕を止める。
みなみは、そんなことにも気付かず、身体を投げ出す俺に、冷たいタオルをあててくれる。
バカじゃねぇの?
俺は、今お前を傷つけることしか考えていないのに。
「水、飲める?」
髪を梳きながらみなみが優しく聞いてくる。
ああ、指が冷たくて気持ちいいな。
「飲めない。みなみが口移しで飲ませて」
俺は甘えた声で、みなみに擦り寄る。
「……っ……」
今お前はどんな顔をしている?
真っ赤になって、言葉を詰まらせているのか?
それとも、期待に胸を震わせている?
そっと瞼を開ければ、飛び込んできたのは、悲しみに濡れた黒い瞳。
その時、心臓が鷲掴みにされたように、急に苦しくなった。
ああ、お前、意外にバカじゃなかったんだな。
そんな顔をさせたかったわけじゃなかった。
この時、俺は初めて罪悪感に心が揺れた。