白猫チロと私の願い。【短編】
プシュー。

おばあさんの「さよなら」の声と同時にバスのドアが閉まった。


………。

私は無性に悲しくなってきて、おばあさんの顔を扉越しに見つめた。


そんな私の気持ちはおかまいなしで、バスはゆっくりと走り出した。


走り出すバスの中でおばあさんはニコニコしながら手を振っていた。


私も手を振り返し、

「おばあさん、またどこかで会えるといいね~」
と、速度を早めて走り去るバスに向かって叫んでいた。



私はバスを見送りながら、しばらく不思議なおばあさんとの出会いを思い返していた。


かわいいおばあさんだったな。

初めて会ったような気がしないくらい。


誰かに似てるような気がするんだけど…


誰だろ?


チロの話まで聞いてもらえたし…


…チロ!

そうだ。
私は急いでいるんだ!

急に現実に引き戻された感じで、私は少し身震いした。

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