白猫チロと私の願い。【短編】
私はベンチの側に止めておいた自転車にまたがり、家へ向かって急いで走らせた。


急がなきゃ。


急いでチロにハンカチを渡して元気になってもらわなくっちゃ。


って…?


「あ~っ!」


私が思わず絶叫すると、すれ違ったおじさんが、ちょっと肩を上げて振り返ったのがわかった。


おじさん、ごめん。

そして、

チロ、本当にごめん。


チロのお気に入りのあのハンカチ、さっきのおばあさんに渡したまんま返してもらってない!


おばあさん、きっと自分の荷物と一緒に持って帰っちゃったんだね。


もう、返ってこない…。
よね…。


気付かなかった私が悪い。

でも…。

でも、あのおばあさんだったら大事にしてくれそうな気がする。


よし。チロには同じようなハンカチ買ってあげよう。

勝手だけど、なんだかチロもわかってくれそうな気がして、私は気を取り直して、自転車をこぐ足を更に早めた。


待っててね。
チロ。

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