白猫チロと私の願い。【短編】
「私が帰った時には、もぅ……」


私は信じられない現実に、ただボーゼンとチロの姿を見つめることしかできなかった。


いつもと変わらなく丸くなって寝ているチロ。


ただ、もう二度とその目が開くことはない。


「ここのところ元気がないし、昨日はご飯もほとんど口にしなかったから、お母さんも気になって病院に連れていこうかと仕事早めに切り上げて帰ってみたんだけど…ごめんね。」


「…なんで…?こんなに急に…?確かに最近、元気なかったけど…今朝だって、そこに丸くなってたよね?「チロ言ってきます」って声かけたら顔向けてくれて…」


チロ?
チロ?


お願い。
私のそばから消えないで。


神様。

お願いだから、

チロを連れていかないで。

チロとズーッと一緒にいさせて下さい。



私はチロのそばに寄ると、

「ごめんね。独りぼっちで逝かせちゃったね…」

と、声をかけて背中をなでた。


チロは柔らかくて温かった。
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