白猫チロと私の願い。【短編】
「お母さんね、思うんだけど、チロはきっと寂しくなんてなかったと思うの。だって、チロの顔、見てごらんなさい。とっても幸せそうな顔してるでしょ。きっと、大好きなあなたのそのハンカチのそばにいたから、苦しかったり寂しくなんてなかったんだと思うのよ。」


ハンカチ…?

私は涙をこすってチロの姿を見ると、丸くなったチロの体の下には、お気に入りのあのハンカチがあった。


まさか!


私は自分の目を疑った。

「…嘘!このハンカチがここにあるわけない!だって、今日は私が学校に持っていってたのよ。だからチロに渡してあげなきゃと思って、急いで帰ってきて…。でも、途中で具合の悪いおばあさんに出会って…そのおばあさんに渡したまんまだから、今は私、持ってないけど…」

最後の方は、もう声になっていなかった。

母親はそんな様子を見兼ねて、私の体を引き寄せると強く抱きしめて言った。

「落ち着いて。落ち着きなさい、ね。…別のハンカチと間違えたんじゃないの?だって、お母さんが帰って来た時から、あのハンカチはチロの下にあったのよ。」
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