白猫チロと私の願い。【短編】
私はバス停へ向かって歩いていた。

風が優しく吹いていた。
そう感じれるってことは、少しは気持ち穏やかになってきたのかな。



考えても、
考えても、

おばあさんに渡したハンカチは、確かにあのチロのお気に入りのハンカチだった。

そして、おばあさんはそのハンカチを持って行ってしまった。


なくなったんだ。

でも、今はチロと一緒にねむっている。


どういうこと?


どう考えればいいんだろう。

おばあさんに出会ったことが全部夢?



私はバス停の前に着くと、昨日おばあさんと座ったベンチに腰掛けた。

ここで、こうして座っておばあさんと話したんだけどな…

すると後ろの方から、

「愛ちゃん。愛ちゃん。何してるの~?」

と、大きな声がした。

ビックリして振り向くと、駄菓子屋のおばちゃんが手を振りながら小走りで駆けて来る。

「おばちゃん。」

私は精一杯の笑顔を作ったつもりだった。

「やだ。どーしたの!そんなに目、真っ赤っかにして!死にそーな顔しちゃって!何かあった?」

おばちゃんはベンチをまたぐと私の前に立ち、腰をかがめて私の顔を覗き込んだ。


「わかるか…」

私は軽く舌をだして、力なくおばちゃんに笑いかけた。

そして、認めたくない現実を声に出した。

「…おばちゃん、あのさ…。えっとね…チロが、チロが死んじゃったんだよね…」

「エッ!!」

普段から声の大きいおばちゃんだけど、今の、

「エッ!!」

は、静かな空気にかなり響きわたっていった。

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