白猫チロと私の願い。【短編】
「チロちゃんが死んだ?え?嘘でしょ?だって愛ちゃん、昨日ここでチロちゃんと並んで座ってたじゃないの。…急に死んじゃうなんて…。何?事故かなかなの?」


………は?

私は目を広げて、おばちゃんの顔を黙って見上げた。

「愛ちゃん?」

そんな私をおばちゃんは心配そうに覗き込んだ。
「おばちゃん、こんな時に悪い冗談やめてよ~。チロ最近ズーッと調子悪かったんだし、私がチロとここに座ってるわけないじゃない。」

おばちゃんは、更に心配そうな顔をして、

「愛ちゃん、大丈夫?だって、そうだよ。昨日、学校から帰る時間くらいにここにチロと並んで座ってたじゃない。おばちゃん見てたんだよ。」

そう私に諭すよう言った。

なんのためらいもなく言うおばさんに、何か悪気があるわけではないだろうし。

「…おばちゃん?確かに私、ここには座ってたよ。でも一緒に座ってたのはチロじゃないでしょ?おばあちゃんだったでしょ?」

すると、おばちゃんは口をアングリと開けたまましばらく黙り込んだ。

言葉もない…
って感じだ。

そうして、おばちゃんは黙ってしばらく考えたような顔をした後に、

「愛ちゃん。おばちゃんね、確かにいつもそそっかしいけどさ、人間と猫を見間違えるほどバカじゃないと思うんだよね。」
と、ゆっくり言った。

今度は私が口を開けたまま黙り込む番だった。

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