白猫チロと私の願い。【短編】
何が現実で、

何が幻だろう?

よくわからないけど。


おばあさんに渡したはずのハンカチがチロの元にあった。

おばあさんの乗って行ったバスは存在しない。

おばちゃんは昨日、私とチロの姿を見て魚肉ソーセージを用意した。


これは現実。

これで十分。


チロ…。

チロは独りで逝ったわけじゃないんだよね。

私に会いに来てくれたんだよね。

こうして今、

おばあさんとの出会いをを思いかえすと、

やっぱりあれは、
チロだったんじゃないかって私も思う。

誰かに似てると思ったの、
あれ、チロだ。

チロに似てたんだ。


あのハンカチの匂いが好きだって言ったね。

私の匂いがついてるから…。

助けてくれてありがとうって、

楽しかった、

幸せだった、

って言ってくれたよね。

チロが伝えたかったこと、よーくわかる。


「チロと話がしたい。」

「幸せだったか聞いてみたい。」


私のこの願い、チロが叶えてくれたんだね。


ありがとう。

チロ。

チロの気持ち、

十分伝わったよ。

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