白猫チロと私の願い。【短編】
でも、やっぱり…。


私は自転車を漕ぐ足をゆるめると、後ろを振り返った。


「ゔ~ん~。」

そうして心を決めると自転車から降りてUターンし、自転車ごと一緒に駆け出した。


「おばあさん、大丈夫ですか?」

地面に座り込みそうになりつつも、おばあさんは声をかけた私の顔を覗きながら小さく微笑んだ。

ただ、その顔は青白い。

「おばあさん、少しそこで休みましょうか。」

私はおばあさんの腕をつかんで、すぐ近くにあるバス停のベンチに腰掛けるよう誘導した。

おばあさんはヨタヨタしながらもベンチに座ると、

フーッ。

と、一息ついた。

私は鞄の中をガサゴソと探しだし、ヨレヨレになったハンカチを見つけると、おばあさんに差し出した。

「こんなんでよかったら使ってください。」

おばあさんは、一瞬物凄く驚いた顔をしたけれど、すぐに物凄く嬉しそうな顔に変わるとハンカチを受け取った。
< 3 / 22 >

この作品をシェア

pagetop