白猫チロと私の願い。【短編】
「ちょっと顔色よくなってきたみたい。」

私がそう声をかけると、おばあさんは額の汗を拭ったハンカチを、何だか大切に大切にさすりながら、

「これのおかげだね。」

と言った。

私はそのハンカチを見ると、何だか申し訳なくなくなり謝った。

「いえいえ。ごめんなさい。そんな古いハンカチ…渡すのも失礼って感じで…」


おばあさんは、そんな私を見てちょっと困った顔をすると、
次の瞬間、

満面の笑みで、目の前にハンカチを、

パッ―

と広げた。

ほとんど色落ちして、ピンクがぼやけてしまったガーゼのハンカチが、私の目の前で揺らいでいる。


「なんだかねぇ。このハンカチ、おばあちゃんの大好きな匂いがするの。この匂いを嗅いだら、気分が落ち着いてきたよ。だからお嬢ちゃん、謝らないでちょうだいな。」

広がったハンカチの隙間から、おばあさんが顔を覗かせていた。

なんか可愛いな。

このおばあさん。

すごく好きかも。

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