英国喜劇リコレクション
「セルマぁ? どこ? ちょっと井戸で水を汲んで来てー!」
「はぁーい!」
家の中で読んでいた本を投げ出し、小さな子どもは外へ飛び出した。
陽光が木々の隙間から出る昼下がり。
家の前に置かれている井戸の桶を掴み、暗い底へ落とす。
行き先を覗いてみるが、暗い筒は中を映すことを拒み、好奇心をたっぷり含んだ自分の顔を返してくる。
十にも満たないセルマ・アトウッドが、ぽっかりとした水面に揺れていた。