理想の瞳を持つオトコ ~side·彩~
バスローブから、着てきたワンピースに着替えると、かの子さんがヘアメイクをしてくれた。


「器用なんですね」

「うふふ、おおきに。

元々は美容師やってんけどな、ネイルアートにハマってしもて…
ハンドケアやフットケアするんやったら、ついでに全身も…って、勉強していったら面白うてな。

いつかトータルケアが出来るお店を持ちたいと思てたんやけど、一人でやるにはこの位のスペースで予約制にせな、緊張で手ェいっぱいになってしまうんやわ」

そう言って、またアハハハと豪快に笑った。


ヘアセットとメイクが終わると、自分じゃないみたいに綺麗に仕上がった姿に、思わずポーッと鏡に見惚れてしまう。


「逸晴くん、間違いなく惚れ直しはるわ」

自慢げに頷きながら、そう言うかの子さんに

「綺麗にして下さって、ありがとうございます」

と、頭を下げる。


「どういたしまして。
何時でもいらしてちょうだいな。

エステ無しでも、着物の着付けとか、パーティーのヘアメイクとか…
葉子抜きでも、遠慮無う頼ってちょうだい。

笹森家の奥様二人を御世話できるやなんて、光栄なコトこの上無いわ!」

興奮気味の、かの子さんに…

「あの…盛り上がってるところ、申し訳ないんですけど…

私、ただの観光客で…明後日には帰るんです」

と、申し訳なく思いながら伝える。


「ええ~っ!?なんやて?
そんな話、聞いてへんわ!!

葉子、葉子ぉ~!!」

大きな声で葉子さんの名前を呼び、私の腕を掴むと、女性とは思えない力強さでリビングへと引っ張っていく。
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