理想の瞳を持つオトコ ~side·彩~
「ねぇ、洋介…
近々、休みの日とか早く帰れそうな日とか、どこかで時間取れない?」
いつもの夕食後、私が何気なくそう切り出した途端、みるみるしかめっ面になる洋介。
「お前、舞台前の役者、ナメてんの?
どこにそんな暇あると思ってんだよっ!!」
ガンッという音ともに蹴られたテーブルから、皿が滑り落ち、カップが倒れる。
幸い器もカップも空だったし、割れることもなかったから大した被害では無かったけれど、私を怯えさせるには十分な効力を発揮する。
「…ごめんなさい」
落ちた器を拾い集めながら、そう呟くように謝ったのが火に油を注いだのか、
「お前、本当に分かってんのか?
入団5年目にして、初の主役だぞ!!
〔劇団絡め・りーぜ〕の十八番、探偵モノの推理ミステリーでの主役演るってコトは、俺が劇団の看板役者として認められたってコトなんだぞ!!
この夏の舞台に俺はかけてんだよ!!」
怒鳴り散らす洋介に、もう一度ガンッと蹴られたテーブルが、器を拾っていた私の肩にぶつかる。
「つっっ…」
声を殺して、肩を抑えれば、
「大袈裟なんだよっ!!」
吐き捨てるようにそう言い放って、部屋を出て行く洋介の背中を見ながら、
『ただ一緒に、旅行用の買い物がしたかっただけなのに…』
言いたかった言葉は飲み込むしかなかった。
数分後、タバコを手に戻ってきた洋介は、テーブルを片付ける私を背中越しに抱きしめ…
「さっきは、ゴメンな?
つい、カッとしちまってさ…
忙しくてイライラしてたのかな、俺?
でもお前も悪いんだぜ。
お前だけは俺の理解者だと思ってんのに、あんな無神経なコト言い出すからさ…
どうせ旅行の話したかったんだろ?ん?」
首筋に顔を埋め、甘えた態度を見せながら、私の考えはお見通しだと言わんばかり。
今更さっきの話を蒸し返すのも、なんだか気乗りがしなくて、
「うん」
と、短く頷く。
「お前はバカだな…
そんな話、わざわざ時間空けなくても、飯食いながらでもできるだろ?
それとも楽しみにしすぎて浮かれてんのか?
それなら、お前が行きたい所にすれば?
俺は、駅前にある〔劇団季節〕の舞台が見れれば、後は興味無いし。
こっちは公演前で忙しい分、準備を手伝えなんて言い出さなけりゃ、後は好きに決めてくれて構わないぜ」
そんな洋介の言葉は、体のいい丸投げだと思ったけれど、割り切るしかない。
私の好きなプランで良いってことは、思う存分マキ先輩のアドバイスを貰えるってコトだし。
なんだかギクシャクしたままの関係を改善して、うんと楽しんで笑いあえるようなプランを考えなくちゃ!
近々、休みの日とか早く帰れそうな日とか、どこかで時間取れない?」
いつもの夕食後、私が何気なくそう切り出した途端、みるみるしかめっ面になる洋介。
「お前、舞台前の役者、ナメてんの?
どこにそんな暇あると思ってんだよっ!!」
ガンッという音ともに蹴られたテーブルから、皿が滑り落ち、カップが倒れる。
幸い器もカップも空だったし、割れることもなかったから大した被害では無かったけれど、私を怯えさせるには十分な効力を発揮する。
「…ごめんなさい」
落ちた器を拾い集めながら、そう呟くように謝ったのが火に油を注いだのか、
「お前、本当に分かってんのか?
入団5年目にして、初の主役だぞ!!
〔劇団絡め・りーぜ〕の十八番、探偵モノの推理ミステリーでの主役演るってコトは、俺が劇団の看板役者として認められたってコトなんだぞ!!
この夏の舞台に俺はかけてんだよ!!」
怒鳴り散らす洋介に、もう一度ガンッと蹴られたテーブルが、器を拾っていた私の肩にぶつかる。
「つっっ…」
声を殺して、肩を抑えれば、
「大袈裟なんだよっ!!」
吐き捨てるようにそう言い放って、部屋を出て行く洋介の背中を見ながら、
『ただ一緒に、旅行用の買い物がしたかっただけなのに…』
言いたかった言葉は飲み込むしかなかった。
数分後、タバコを手に戻ってきた洋介は、テーブルを片付ける私を背中越しに抱きしめ…
「さっきは、ゴメンな?
つい、カッとしちまってさ…
忙しくてイライラしてたのかな、俺?
でもお前も悪いんだぜ。
お前だけは俺の理解者だと思ってんのに、あんな無神経なコト言い出すからさ…
どうせ旅行の話したかったんだろ?ん?」
首筋に顔を埋め、甘えた態度を見せながら、私の考えはお見通しだと言わんばかり。
今更さっきの話を蒸し返すのも、なんだか気乗りがしなくて、
「うん」
と、短く頷く。
「お前はバカだな…
そんな話、わざわざ時間空けなくても、飯食いながらでもできるだろ?
それとも楽しみにしすぎて浮かれてんのか?
それなら、お前が行きたい所にすれば?
俺は、駅前にある〔劇団季節〕の舞台が見れれば、後は興味無いし。
こっちは公演前で忙しい分、準備を手伝えなんて言い出さなけりゃ、後は好きに決めてくれて構わないぜ」
そんな洋介の言葉は、体のいい丸投げだと思ったけれど、割り切るしかない。
私の好きなプランで良いってことは、思う存分マキ先輩のアドバイスを貰えるってコトだし。
なんだかギクシャクしたままの関係を改善して、うんと楽しんで笑いあえるようなプランを考えなくちゃ!