理想の瞳を持つオトコ ~side·彩~
鍵を交換してもらう間に、旅行用のキャリーバッグの中身から洋介の物を抜いていく。


それから…
冷凍冷蔵庫の中から、いくつかの食材を取り出して袋に詰め込み…

大荷物を抱えて呼び出したタクシーで、マキ先輩の家へ向かう頃には、辺りはもう、すっかり暗くなっていた。



「急にすみません」

「いいわよ、別に。
それより晩御飯は何かしら?」

抱えてきた大荷物を玄関先で受け取りながら、マキ先輩は、いつもの笑顔で迎入れてくれた。


「家にあったものばかりで悪いんですけど…」

食材の入った袋を、少し掲げて見せる。


「今夜は飲むでしょ?
白ワイン、キンキンに冷やしてあるのよ。

あさりも買ってあるから、ワイン蒸しにして合わせようかなって、思ってたところだったの。

後は、冷蔵庫の中から好きに使って」

入社してから何度もこんな風に、マキ先輩の家のキッチンで料理を作っては…

二人で飲み明かしてるから、もう手慣れたものだ。


「じゃあ、そのアサリいただきます。

冷凍しておいた鯛の切り身があるんで、トマトと一緒にアクアパッツアにしましょう」

袋から鯛とトマトを取り出し…

エプロンを身につけ、手を洗って、冷蔵庫を物色しながら、残りのメニューを考える。


「バゲットがあればなぁ…」

そう呟くと、

「向かいのコンビニに行ってくるわ」

マキ先輩が財布を手に取って、買い出しに行ってくれた。
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